第44章 ❤︎ そうだ!ラブホに行こう! 岩泉一
≫一side
いちかの言ってた通り普通の浴室でシャワーを浴びた後、いちかの待つ部屋に戻った。
「おかえり〜」
明るい声で俺を迎えたいちかは、チンケなメロディが流れるメリーゴーランドに乗り楽しそうにクルクルと回っている。
「何してんの、お前?」
「だって折角来たんだし乗っとかないと勿体無いでしょ?一君も乗る?」
「嫌だ」
「思ったよりも楽しいよ?気分は子供に…ってあれ?もう止まっちゃった」
「はよ降りろ」
「じゃあまた帰る前にもう一回乗ろう」
「乗るのかよ!?」
「だって元取らないと。無料なんだもん」
ったく色気も雰囲気も全くなくて俺たちはここに何をしに来たんだよ。危機感なしにニコニコしながらベッドに入るいちかに苛立ちを募らせてたまらず抱き寄せる。柔らかいバスローブと甘い香りに包まれる。
「一応聞くけど、ここに来たのってメリーゴーランドに乗るためじゃねぇよな?」
「もちろん」
「この部屋の所為で全然気分上がんねぇけど、やることはやって帰るぞ」
「一君だって全然色気ない。……でもその前にもう一つやってみたいことがあるの」
顔をあげるいちかがニヤっと笑ってリモコンでテレビの電源を入れた。
「…お前、まさか……」
「私ね、AVって一回ちゃんと観てみたかったの」
えへ☆と可愛げに笑った割にはとんでもないことを言い出した。リモコンを操作しご機嫌に番組表をチェックしている。
「ここすごいね。アダルト番組3チャンネルもあるよ!!」
「…そりゃあラブホだからだろ?」
「えっとねー、今の時間は……“新人OL、アフター5の密会”と、“洋物特集ロリータ女優ミーナの場合”と、“熟女祭り ー好子さん、僕の巨根を捧げますー”だって」
「…読み上げんな、馬鹿!」
特に最後!一瞬吹き出してしまいそうになるのを堪えながらもいちかは全く気にする様子もなくニコニコしている。