第44章 ❤︎ そうだ!ラブホに行こう! 岩泉一
着いて早々疲れ切っている様子でピンク色のベッドにゴロンと横になった。慣れない運転で疲れたのかな、なんて思いながらも備え付けのバスローブ片手に浴槽の扉を開けた。
浴槽もさることながら……と言いたいのだけど、浴槽は普通の造りで一瞬夢から覚めたようながっかりした気分になりながらも、本来の目的の為にいつもより丁寧に体を洗った。
浴室から出ると部屋の真ん中のテレビからは漫才番組が流れていた。メルヘンな部屋にメリーゴーランド、そして流れてくる漫才…。そんなカオスな空間で一君は備え付けの棚の中を物色したり、引き出しを漁っている。
「……何してるの?」
「いや、隠しカメラねぇかな、っと」
「…そんなの都市伝説だよ?」
「んなこと分かんねぇだろ?」
「そうだけどさ…。で、カメラはありそう?」
「…ねーな、多分」
「よかった。もししてるところ隠し撮りされて裏で売られたりしたら最悪だもんね」
「だから警戒してんだろ」
「でも実際カメラ探す人なんているんだね。あ、私の彼氏か…」
「喧嘩売ってんのか?」
「まさか。今から恋人同士の甘い時間を過ごすのに喧嘩なんて売るわけないじゃん」
「たまにお前と話してると何に来たのか分からなくなるわ」
「じゃあ一君もシャワーしてきなよ、お風呂もさぞかしメルヘンな仕上がりかと思ったらがっかりするくらい普通の浴槽だったから」
「予算が足りなかったんじゃね?」
「かもね。大人の事情なんでしょうよ」
「なんか疲れた。俺も風呂行ってくる」
「ん…、行ってらっしゃい」
映画とかドラマじゃ部屋に着く前から盛ってたりして扉を開けた瞬間から始まるような熱い時間を期待してないわけじゃないけど現実ってこんなもんだよね。
一君を待つ間、髪を乾かしたりベッドでゴロゴロしながら一くんを待っていると、中央に置かれたお馬さんと目があった。