第41章 恋する細胞 岩泉一
「俺もこんなに急ぐつもりはなかったんだけどよ…。今朝の事聞いたらなんとかしねぇとと思って。悪かったな」
「そんなこと、ない」
岩泉君の言葉が嬉し過ぎて、処理できないくらいに感情が溢れてる。好意を寄せていた人と距離が縮まって、でこんなにも温かく感じるのは生まれて初めてかもしれない。
ああ、そうだ。これが少女漫画のずぎゅーんなシーンだ。
「柳瀬の気持ちがちゃんと追いつくまで待つから」
「…うん」
「けど、今朝みたいに何かされたりしたら俺に言えよ」
「…言えるかな」
「言えよ、そこは。彼氏だろ?」
「もう彼氏なの?」
「当たり前だろ。気持ちの整理できるまでは待つっつたけど、このままお前を野放しにもしときたくないから」
「私、ちゃんと言えてなかったけど……、っ、好きだから。岩泉君のこと」
「それだけ聞けたらいいわ。俺が好きならそれでいい」
「あの、地味女子ですが、よろしくお願いします」
「まだ言ってる。地味でもお前に惚れた俺の負け」
「……ああ、たまんない」
「何が?」
「……ありがとう。……好きになってくれて」
「おう」
なんだかもう夢を見ているみたいで涙で目の前が滲む。零れた涙は頬を伝って落ちていったけど、目に映る世界はいつもと違って見えて、世界が開けていくようにすら感じた。
「…泣くな」
「ごめん…。今になって嬉しさが爆発した」
「お前のそういうとこ、嫌いじゃねぇよ」
「…ありがと」
真っ直ぐな想いを上手く受け止められない私の不器用さ。だけど気がつけば岩泉君はそんな私ごと優しく包み込んでくれていた。頬に触れたのはあの日一緒に選んだ柔らかなTシャツの生地だった。
fin*