第5章 ❤︎ 三日間ハメまくった記録 黒尾鉄朗
「ちょっとごめんね」
そう言っていちかは席を外しキッチンへと向かう。“どうしたの?こんな時間に…”と話し始めた声は嬉しそうに弾んでいて内心ムッとしていた。
「沖縄楽しんで…え?録画?予約はしてないと思うけど?……じゃあ録画しておいたらいいんだね…、うん、分かった」
聞くつもりはなかったけどすぐ隣のキッチンから嫌でも聞こえてくる会話。電話してきたら普通は変わりないかとか聞くもんじゃねえの?って最初から俺は違和感を感じていた。
「そっちはどう?楽しい?…え、私?…うん、お酒は、飲んでないよ?…うん、ちゃんと掃除もしてるし…。ほんとに、ちゃんとしてるから」
何を話しているかまでは分からないないけど一方的な向こうからのまくし立てるような声だけが聞こえている。
「そうだよね。ちゃんと出来てないとね。…また、何も出来ない恥ずかしい彼女だって言われちゃうよね。今度はちゃんと、うん、頑張るから…。ほんとにごめん」
明らかに声色が変わったいちか。あーあ、なるほどねってそれだけで全部察した。多分、この男といてもいちかは幸せになんて絶対になれねぇわ。
大好きな彼氏との電話なのに困惑したような表情で話をしているいちかを後ろから抱き締める。“今はダメ”って言いたげな顔されてもこのままにしておきたくなかった。今にも泣き出しそうな声を聴きながら慰めるように項に唇を這わせ抱き締めた腕に力を込めた。