
第41章 恋する細胞 岩泉一

「あっちー。…あー、汗だく。ちょっとシャツ脱ぐわ」
「あ…、うん」
別に裸になるわけじゃないけどちょっと視線を外して転がったボールを拾った。ふと見ればシャツの下には黒いTシャツ。
「……根性論?」
「いいだろ、このTシャツ」
「変、じゃない?」
「あ?なんでだよ」
「変わってる」
「変って言われたの初めてなんだけど」
「私の感覚が変なのかな」
「それは知らねぇけどお前結構はっきりしてんだな」
「だから時々嫌われるんだけどね」
いつも後から失礼な事言っちゃった、なんて反省はするんだけど、どうも人とのコミュニケーションが上手く図れなくて…。
「まぁ今時根性論なんて流行らねぇよな…」
「でもド根性ってところは岩泉君らしいよね」
「このTシャツもそろそろ替え時だな…」
「ごめんね、私が余計な事言っちゃったから」
「いやいいわ。それより新しいTシャツ買いに行くの付き合ってくれね?今日放課後暇か?」
あっけらかんと“部活休みなんだよ”と言いながらボールを籠に戻す。
「それは私と岩泉君で?」
「そりゃそうだろ?」
そうだろってそうかもしれないけど、久しぶりの再会とはいっても初めて話をしたようなものなのに、さらっと誘ってくるなんて岩泉君何者…?
「でも私なんかとじゃ…」
「お前が俺のTシャツにケチつけたんだろ?」
「だからそんなつもりじゃないの。気に障ったなら本当に謝るから…」
「謝って欲しいわけじゃねぇって、ただ、買い物に付き合ってくれってだけだろ?」
私にとってはそれがハードルが高いんだよー。しかも服を選ぶセンスなんて皆無だし。
「暇だったら付き合え」
「あ、はい」
やば…、ついつられて“はい”って言っちゃった。
「じゃあ放課後門のところでいいか?」
「え、…あの」
「アイスくらい奢ってやるから絶対来いよ?」
「アイスよりはハンバーガーがいい……じゃなくて私と一緒で良いの?ほら、男女が一緒にいるところ見られてたりすると変な噂とかあるかもしれないし」
「男女って…いつの時代だよ。そんなのねぇから」
「あるかもだよ。私はいいけど岩泉君に迷惑かけるわけにはいかないから」
「俺が付き合えって言ってんだよ。とりあえず放課後正門のところで待ってろ、いいな?」
そんな…、ジャ○アンじゃないんだから。私が優柔不断なのは分かるけど岩泉君っていつもこんなに強引なのかな…。
