第40章 ❤︎ 電車の中のハプニング 鎌先靖志
やった後はいつも寝てたけど、今回は色んな感情がひしめき合っててベッドの中でいちかの柔らかな髪の毛を撫でながら抱き締めていた。勢いでこんなとこまで来てしまってバレたら退学とかそのくらいの処分なんだろうけど、でも後悔はしていない。
「先輩」
「ん?」
「腰が痛いんですけど」
「ああ、…ごめん……」
「せっかく今日のデートのために可愛い服着てきたのに服も褒めてもらってないし」
「会った時に可愛いとは思ったんだけど、なかなかそういうの言えないからな。…ちゃんと似合ってた」
「ほんとですか?なんか今日の先輩、いつもより素直ですね。した後はいびきかいて寝ちゃうのに今日は起きてるし」
「なんか今は眠くならねぇんだよ…」
「珍しい。帰りに雨降らなきゃいいですけど」
「降水確率0%なんだから降らねぇよ…」
「そっか。0%じゃ降らないですね」
「あ、そういや言ってなかったけど俺、就職内定もらったから」
「え?いつ?」
「昨日届いてた」
「おめでとうございます。これで先輩も無事卒業できますね」
「後は単位落とさなきゃいいだけだ。けどこれで免許も取りに行けるし今日行けなかったベ○ーランド、車で行こうな…?」
「わぁ、嬉しい。先輩の運転、きっと格好いいだろうな」
「そん時は写真も好きなだけ撮っていいから」
「ほんとですか?」
「俺も付き合ってんだから写真の1枚くらい撮りたいよな、普通に考えても」
「でも私、先輩の寝顔は沢山撮ってます」
「はぁ?いつだよ」
「だって先輩した後いっつも寝ちゃうんだもん。その間は撮り放題です」
「まじかよ。お前、言えよ。そういうのは」
「今言いました。でも次はツーショット写真、ちゃんと撮ってくださいね」
「分かったよ」
「約束ね?」
「ああ、約束する」
腕の中でくすくす笑って前髪が揺れるのがくすぐったいけど、やっといつものいちかに戻ったように思えた。