第40章 ❤︎ 電車の中のハプニング 鎌先靖志
「いつもの笑顔に戻ってんな…。んならさっきのことはもう平気か?」
「はい、大丈夫です。…でもしばらくは電車乗りたくないかな」
「後少し待っててくれたら俺が車で迎えに行くから」
「先輩が卒業しちゃってからも?」
「当たり前だろ?毎日でも迎えに行ってやるよ」
「じゃあ期待してます」
「ああ、待ってろ」
いちかは腕の中で柔らかな笑顔を俺に向けた。アクシデントはあったにせよ、俺が一番守りたい存在がより色濃く自分の中に刻み込まれた。
「ずっと俺にそばにいろよ」
「先輩が嫌って言っても離れないから」
「言っとくけどこの先も離す気はねぇからな」
「はい、分かりました」
「ってことで俺は寝る」
「結局寝ちゃうんだ」
「けど写真は撮るなよ?」
「分かりました。じゃあしっかり先輩の寝顔を焼き付けておきます」
「やめろって」
「嫌です。だって好きなんだもん」
「可愛いことばっか言ってるともう一回襲うぞ」
「やです。もう腰が持ちません」
「じゃあお前も寝ろ。な?」
「ええー?」
「昼寝だ昼寝!」
シーツに包まるいちかごと抱き締めた。中からくすくす笑う声が聞こえてたまらなく愛おしくなる。俺の名前を呼ぶ声もコロコロ変わる表情も全部、このままずっと俺のもんにしておきたい。
fin.