第40章 ❤︎ 電車の中のハプニング 鎌先靖志
電車内には走行音と雑音といちかの柔かな感触。周りの迷惑にならないようにって会話はほとんどしなかったけど時々目を合わせて笑い合った。周りから見ればただのバカップルに見えるだろうけどそんなことは関係なかった。
ふんわり香るいちかの甘いに匂いと移り変わる景色を楽しみながら目的の駅まであと少しになった時だった。俺はいちかの異変を感じた。突然俺にぎゅっとしがみ付いて何かを訴えそうな潤んだ瞳で見つめていたいちか。
「……せんぱい」
グロスで色付いた小さな唇が俺の名前を呼んだ。煽ってんのか?って思うけど普段感じない違和感に俺は冷静を保ちつつ答えた。
「どうした?」
「先輩…あのね。………やっ」
「…いちか?」
「…………怖い」
震えた小さな声に耳を疑ったが“怖い”確かにそう聞こえた。
「…何が?」
こんだけ近くにいるのに怖いなんて言葉の理由が分からなかった。だけどきゅっと目を閉じて俺にしがみ付くいちかに嫌な予感を感じた俺は周りを見回した。そしていちかの体に触れる知らないオヤジの手を目撃し、その光景を理解した瞬間に一気に頭に血がのぼるの感じた。
正直なところ、そこからはあまり覚えていない。
いちかに聞いた話によれば、俺はいちかの尻を触っていたおやじの胸ぐらを掴みかかりその場は一時騒然としたらしい。すぐに車掌が駆けつけて事情を話したが(この時もかなりキレていたらしい…)オヤジは否定し勘違いだと言い張った。
けど、たまたま隣にいた美人なお姉さんも目撃していたらしく、証言があったおかげでオヤジは次の駅で降ろされホームで待機していた警察によって連行された。