第37章 ❤︎ 飽くなき探究心と勇気を持って澤村大地は購入ボタンを押す
虚しさを覚えたのはいつだったのか。彼女がシャワーを浴びている間の賢者タイム。
俺もそれなりには努力してきた。前戯に時間をかけて小さな反応も見逃さないようにして…。でも何が足りないのか何が必要なのか、俺には分からない。
何か飲もうと扉を開けば冷蔵庫ではなく、そこだけ異空間な雰囲気を醸し出すアダルトグッズの自販機。そういえばじっくりと見る機会もなかったなと覗き込めば精力系のドリンクからコンドーム、所謂大人のおもちゃといわれるものが並んでいる。
目に触れた瞬間、使ってみたい…そんな欲がふっと湧き上がった。
今月はバイト代も入って余裕もある。それにそもそも俺の為じゃなくこれは彼女のためだ。躊躇う理由はない。だけど一度踏み入れたら戻れないかもしれない…、そんな葛藤。
結局俺は“極太”と書かれたバイヴなんて買う勇気はなく俺は悩んだ末に350円の精力剤と1000円の簡素な作りのローターを手に入れた。
いかにも怪しげな亀のイラストが書かれたドリンクを一気に呷ってバレないようにとごみ箱へ捨てた。味は案の定不味い。口の中に嫌な苦みが残ってこれならいっそ飲まなきゃよかったと後悔するくらい。
こんなんじゃキスもできない、慌てて洗面台で口を濯ぐと浴槽の扉が開く。
「大地、お待たせ。シャワー代わるよ」
「ん、サンキュ」
俺の前を通り過ぎるはバスタオル姿のままふわっと香る甘い匂い纏う。
「今日泊っていくんだよね。今から映画観てもいい?」
シャワーをし終わってドライヤーで髪を乾かしながら余韻なんて全く感じさせずあっけらかんとしている。一方の俺はバスタオルからすらっと伸びた脚から胸元、鎖骨へと視線を上げていくだけでまたよからぬ欲が湧き上がって質が悪い。
「いいよ。好きなの観てて。俺もシャワー浴びてくるし」
「はーい」
ころんとベッドに寝転がって上目遣いで俺に見つめる仕草も可愛くて抱きしめたいって欲をぐっと抑える。飲んで数分も経ってないのに気のせいかドキドキし始めていて体がかぁっと熱くなってくらっとした。
空きっ腹だったとは言えまさかさっきのドリンクがこんなに効き目が早いとは思わなかった。二回目への期待を一人膨らませながら冷静さを失わないように冷たいシャワーを浴びた。