第36章 魔法にかけられて 宮治
「治、連れてきてくれてありがとう。いい思い出になったし明後日から仕事頑張れるわ」
「その言葉が聞けてよかったわ」
「あの派遣のおじさんに負けんよう気合い入れ直さなね」
「ほな、頑張り屋さんにもう一つ俺からプレゼントあげよか?」
「もう十分やで?沢山お土産も買ってもらったし」
「俺も魔法使えたらなぁとは思うけどまだ修行が足りんみたいやから、夢の国の力でも借りるわ」
「えー?何それ?なんでいきなりそんな事言うん?」
もう少し先でもええかなって思ってたけど、俺もひとつ決心がついた。たまたま土産屋で目について思わず手に取ってしまった。
所詮は土産用のアクセサリー。高価なものちゃうしサイズやってフリーサイズ。けど、小さな袋に込められた大きな想いと決意を魔法の力を借りて伝えたい。
「これ、なぁんや?」
「……マニーちゃんのリボンがついた指輪?可愛いな、これ。どしたん?」
「買うた」
「へぇ、珍し…。誰かのお土産?」
「いや?」
「…え?じゃ何?」
指輪見せたら気付くかなと思ってたけど本気で誰かの土産やと思い込んどる顔してる…。ま、でも先に気付かれるよりちゃんと言葉で伝えなな?
「結婚しよか?
「……へ」
「なんちゅう間抜けな声出してんねん」
「いやだってそんなん…、……え?」
「今日明日で魔法がとけるんは嫌やろ?せやからこうして形に残そうと思って」
「…ちょ、待って、嘘やん。…だって治がこんな事するわけない」
「これも夢の国の魔法やろなぁ。俺やって自分で吃驚やし侑に知られたら死ぬまでネタにされそうやもんな」
「……あの、ほんまに言うてる?嘘やない?」
「職場がちゃうから直接守ってやれんけど、俺が今出せる一番強いカードっていうたらコレかな、と。もちろん向こう帰ったらちゃんとしたの買うから今はこれで我慢してな?」
「どうしよ…、泣きそうになってきた」
「泣いてもええで?一生に一回の事なんやから。…じゃ左手出して?」
震える指に手を添えて指輪をゆっくりと嵌めていく。この瞬間の為にここまで来たんかなって思えばこの弾丸旅行も大いに意味がある。