第36章 魔法にかけられて 宮治
いちかの白い指にはピンクのマニーちゃんのリボンが映えて、恥ずかしそうに俯いた顔にそっとキスをした。
今まで数え切れないくらい何度もキスを交わしてきた。でもこの瞬間に重ねているキスはこれまでとはまるで違っていて特別なもの、熱い想いが込み上げてくる。腕の中に収めて、いちかにだけ聞こえるように言葉を紡ぐ。
「僕と結婚してください」
「……僕って柄とちゃうよ?」
「細かいことはええやん。言わせろって」
「だって、ほんまに王子様みたいやん」
「ちぇるちぇるランドには負けるけどな」
「またそういう事言う…。ええ雰囲気やのに
「関西人の悪い癖やから。……それで結婚は?どうなん?」
「するに決まってるやろ。治のお嫁さんは私しかおらんもん」
「えらい素直な返事やな」
「これも魔法のせい?」
「けどもう返品交換はできんで?」
「ええよ。私が一生面倒見てあげるから」
「そら頼もしいな。おおきに」
「もう少し抱き締めとって?この瞬間をいっぱい味わいたいから」
「もちろん」
俺からしたら小さい背中をもう一度ぎゅっと抱き締める。夜景の中で窓に映るいちかの後ろ姿は、白いウエディングドレスに包まれているように俺には見えた。
「なぁ…、私ここで式あげたい」
「それは………、ちょっと魔法でもどうにもならんかも……」
fin*