第35章 ❤︎ HOW TO SEX 木兎光太郎・赤葦京治
≫赤葦side
駅裏は路地裏を抜けると歓楽街だった。駅前の洒落た雰囲気とは打って変わっていかがわしいネオンが輝き、空気も湿っぽくどんよりしている。目の前の二人は互いに寄り添い若干千鳥足でふらつきながらネオン街を進んでいく。
本当に事に及んでいいのかは俺にも分からない。というか木兎さんを野放しにして二人きりにしておくのも不安で二人の後をついていくしかなかった。
「いちかちゃん、ホテルどこにする?」
「どこがいいかなんて分かんなんですよー」
「じゃあ適当に空いてるところでいい?」
「ちょっと、二人ともせめてちゃんと歩いて…」
「いいじゃん。これから深い仲になるんだし」
「絶対内緒にしといてくださいよぉ」
「当たり前じゃん、俺、来世の墓場まで持ってくってー」
「そのノリが軽すぎるんですよ、先輩は」
「大丈夫だって。逆に素面じゃできないじゃん」
「そうですけど」
「あ、あそこホテルじゃん。空室…ってなってるしあそこは?」
「どこでもいいです。歩いてたら酔いも回るから早く座りたいです…」
「だったらあそこでいいんじゃないですか?」
「そんなら俺が抱っこで連れてってあげるよ?」
「え…いや、…えぇ!?」
上機嫌な木兎さんは戸惑っているいちかをひょいと抱え上げた。
「ちょ、危ないから」
「大丈夫だって。酔ってても女の子落としたりしないから…。いちかちゃん軽すぎ」
お姫様抱っこで抱えると思いっきりにやけてキスを迫るように唇を尖らせる。
「一応公衆の面前ですから。せめて中に入ってから」
「何だよ、あかーしぃ」
「いいから…」
この人は自分が有名人だって自覚はないのか…。仮にも週刊誌なんかに撮られたらなんて何で俺が気にしなきゃいけないのか…。人目を避けるように(と言っても目立つけど)そそくさとホテルへと入った。