第33章 ❤︎ コーヒーの香りと君の寝顔 東峰旭
ドリップしたばかりのコーヒーにリクエスト通りにたっぷり砂糖と牛乳を加えていく。いちかお気に入りのくまのマグカップと色違いのカップにはブラックコーヒー。こういう何気ないシーンに幸せさが増す。
「昨日はよく眠れた?」
「うん。旭がいつ帰ってきたのかも知らないもん」
「1時過ぎてたかな」
「楽しかった?」
「んー。そうだね…」
「楽しくなかったの?」
「そういうわけじゃないけど、なんかお酒も入っちゃってい異様な空気だったから」
「そうなんだぁ…。旭も相手してあげなきゃいけないから大変だね」
ふわぁっと欠伸をする寝ぼけ眼ないちかの様子に、俺は思わず笑みが零れる。温度も丁度いいコーヒーの入ったカップをいちかに渡した。
「ありがと。………ん、甘い」
「砂糖、多かった?」
「んーん、丁度いい。さすが旭」
「ありがとう」
そう笑ういちか。束の間のコーヒータイム。さぁ、今から少し遅めの朝食を…と思い席を立った時、不意にTシャツの裾を引っ張られた。
「最近……シてないよ?」
「なにを?」
「旭とセックスしてないよ?私…」
拗ねた様子でしかも疑問系で聞いてくるのだろう?って俺にも疑問符が浮かぶ。
「ちょ、いきなり何言って…」
「セックス、してないよね?」
「…怒ってる?」
「…襲ってこないじゃん」
「それはさ、お互い忙しかったし無理強いできないし」
「旭はしたくないの?」
「そんなことないよ。俺だって………したい」
こういう時も口籠もってしまうのは俺の悪い癖だ。したくて堪らなかった夜だってあったけど、疲れているいちかに無理はさせられなくて我慢してきたというのが本音。
「コーヒーもいいけど旭に触れたい」
もの欲しそうな上目遣いで、しかも俺のブカブカのシャツを着ているいちか。乱れた髪も何故か色っぽく見えてそんな気なんてなかったのに心拍数が異常なスピードで上がっている。