第32章 君の手をとりたかった理由 黒尾鉄朗
「俺の好きな人…、柳瀬チャンだから俺に借りられてね」
俺の公開告白に周りの男子は大いに盛り上がり、“えー!?”って悲鳴にも似た声も混じる。
「あの…、私?」
きょとんとした柳瀬さんの顔。可愛くて思わず吹きそうになるけど、ここはぐっと堪えて紳士的に…。
「そう。俺の好きな人を借りてかないといけないから俺と来てくれる?」
「…あ、はい」
“嘘でしょ!?”“やだー”なんて声、どうでもいい。むしろ声のする方に見せつけるように柳瀬さんの手を取る。柳瀬さんの歩幅に合わせて走りながら見た横顔は真っ赤になってて、泣きそうになってるのがまた可愛くて…。マジで彼女にするしかねぇわ…そう密かに思っていた。
そして想いがどんどん加速していくのを感じながら真っ直ぐゴールへと向かって柳瀬さんと一緒ゴールテープを切った。
夜久は髪の薄い校長の毛髪という難題を前に散り、結果は俺たちのぶっちぎりの一位だった。