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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第32章 君の手をとりたかった理由 黒尾鉄朗


校舎裏まで来たところで足を止める。柳瀬さんは俺の歩幅に合わせたせいかずっと小走りだったみたいで息が上がっている。

「ごめん、走らせて」
「黒尾君?」
「…あ、何?」
「なんか怖い顔してたけど、大丈夫?」
「ごめん、そんな顔してた?」
「うん…。…あの、なんかごめんね?私たちのことフォローしたばっかりにクラスの雰囲気悪くしちゃって」
「いや?さっきのはあいつらが悪いだろ。同じクラスの奴勝たせてやりたいって思って何が悪いんだっての
「でも、黒尾君って人気者だから。…だから私のせいで、とか思って」
「昨日も言ったけど、怪我させたいくねぇから」

ちらっと左肘を見ると絆創膏の周りはまだ赤く肌が擦りむけた痕が残っている。“ごめんな”って言葉が喉元まで込み上がってくるけど俺が謝ったって柳瀬さんは多分笑って誤魔化すだけだと思うから。

「体育祭なんだから楽しくやろうぜ?盛り上げるための実行委員なんだから」

ならせめて、柳瀬さんと楽しめるように。いや楽しんでもらえるようにするしかねぇよな。

「ありがとう。最後の体育祭、黒尾君と一緒で嬉しい」
「俺も。ま、欲を言えば勝たせてやりたいとは思うけど無理はすんなよ?
「うん」

“頑張る”と微笑む柳瀬さんを思わず抱き締めたくなるのをぐっと我慢した。

「あの…、黒尾君、それで作戦会議とは…」
「ああ、山田君と山下君もいたんだ。…あー、作戦会議ってのは、俺が前に出るからとりあえず柳瀬さんを落とすような事だけはするなってこと。何にも考えないでいいから俺についてきてくれる?」
「分かった…」
「柳瀬さん落とさないようにだけ気をつけて。………死んでもその手、放すなよ?」

元はと言えば俺の適当な人選が招いたことだったけど、こいつらも男なら女の子に怪我させてんじゃねぇよと一言くらいいってやりたかった。

「柳瀬さんももし落ちそうになったら俺にしがみついて?」
「うん、わかった」
「次は絶対怪我させないから」

左腕の絆創膏を見ながら自分にもそう言い聞かせた。

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