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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第32章 君の手をとりたかった理由 黒尾鉄朗


静かな保健室にはテニス部の賑やかな声が響き夕日に染まる部屋には二人きり。

「腕、細…」
「そう?」
「こんな小柄な子落としてんじゃねぇよな、全く」
「私がバランス保てなくて勝手に落ちただけというか」
「それでも女の子落としちゃだめでしょ」
「黒尾君なら絶対落としたりしないもんね」

え、何それ。俺のこと信用してくれてんの?ただ運動神経がいいからそう言ってるのかもしれないけど柳瀬さんの言葉が嬉しかったりもする。

「消毒するから…、痛かったら言えよ?」
「うん」

綿球で傷口を消毒していく。柳瀬さんはじっと傷を見つめている。女の子相手に傷の処置するのは初めてだから変な緊張感。

「マジでごめんな?」
「大丈夫だよ」
「どこも打ってねぇ?」
「うん」
「そういや、柳瀬さんと喋んのって今日初めてかも」
「そうだよね。クラスも初めて一緒になったもんね」
「じゃあ今こうやって話してんのも何かの縁だな」
「でも私結構見てたよ、黒尾君のこと」
「なんで?」
「私吹奏楽部なんだけど練習場所から体育館がよく見えたから」
「もしかしてトランペット?」
「そう、あの辺で練習してるの」
「へぇ、知らなかった」
「バレー部って強いんだよね。ユニフォームも格好いいなって思ってたの」
「よく知ってるな」
「ずっと見てたから」

その言葉に思わずドキッとする。肩まである真っ直ぐな髪の毛。柳瀬と書かれた体操服。屈託のない笑みを浮かべる表情が可愛いくて…。

「さっきも言ったけど騎馬戦のメンバー組み直すから」
「いいの?」
「不安だろ?」
「うん、少しだけ」
「俺が斉藤君の代わりに出る」
「でも運動部は2種目までしか出られないんだよね」
「リレーは外せないけど、借り物競走は運みたいなもんだから斉藤君でもいけんだろ」
「山田君と山下君は後ろに回ってもらって俺がリードするから。とにかく柳瀬さんを落とさないようにしねぇとな」
「なんかごめんね?」
「いや俺ももっと考えとけばよかっただけだから気にすんな」
「でも黒尾君が前にいてくれたら頼もしい。…私も負けないように頑張る」
「いいね、その感じ」

この子特有の柔らかい雰囲気に自然と口角が緩む。顔が可愛いってのもあるけど、控えめで一生懸命な子、つまり守ってあげたい系。………嫌いじゃないのよね、俺。
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