第31章 ❤︎ infection... 月島蛍・黒尾鉄朗
a year later…
≫月島side
あれは丁度去年の夏。
脳裏に焼き付いた光景は忘れることができないままだった。
あんな事があったというのにいちかとは変わらないままの関係が続いていた。暫くは気不味い雰囲気が続き、別れることも覚悟はしていたけどそれでも好きだといういちかの気持ちに応えていた。そんな僕たちは連休を利用して東京へと向かっていた。家族連れで混み合う新幹線の車内、はしゃいだ様子に一切の危機感は感じられない。
「蛍君から遠出したいなんて初めてのことだよね」
「そう?」
「しかも東京だなんて…。ね、向こう着いたら何するの?」
「行きたいところがあるから、先にそこに行ってもいい?」
「いいよ?でもどこに?」
「それは着くまでは秘密…」
僕だってあの夏の事は忘れかけていた。頭のネジか外れていたのかもと思えるくらいの自分でも異常だった。だけどあの日、純粋に好きという気持ちから歪んだ感情が生まれ、それは今も水面下でずっと燻っている。