第30章 ❤︎ 恋に落ちる条件 松川一静
「なんで笑うの?」
「いや、柳瀬っていつも一生懸命だなって」
「一生懸命というか…。だって私のせいで色々振り回しちゃったもん」
「俺は気にしてないから。とにかく柳瀬のが安心したんならそれでいいからもう謝らなくていいよ」
「部活もあったのに…」
「柳瀬も終わるのをずっと待ってたんだろ?」
「私はいいの。保健室で寝てたし」
「眠れた?」
「自分でも気付かないくらいに寝不足だったんだろうね。寝た後はすっきりしてたもん」
「よかったな。無事に妊娠疑惑も晴れて」
「ほんとにね。……あ、そうだ。ねぇ、ついでだからもう一つ付き合ってくれない?」
「いいけど。今度は何?」
「お昼吐いちゃったでしょ?あれから水分しか摂ってなくて安心した途端、すっごくお腹空いちゃって…。今からコンビニで何か食べない?勿論私の奢りで」
「そういう事なら喜んで。奢んなくていいから」
「でも遅くまで付き合ってもらったし。こんなのお礼のうちにも入んないけどさちゃんと誠意を見せとかないとね」
「及川は勿体無い事したな。こんないい子なのに」
「でしょ?だからね、少しくらいは後悔してくれたらいいのにってずっと思ってた。ま、今となってはもうどうでもいいけどさ」
「強いな?」
「うん…。ほんとにね。自分でもそう思う」
「無理はするなよ」
「……うん、…ありがとう」
及川の事を口にする時はいつも暗い表情をしていたのに今は柳瀬の表情が和らいで見える。
近くのコンビニまでは数百メートル。その僅かな距離でも今は大切だ。とんだ人騒がせだったけどピザまんを美味しそうに頬張る姿に思わず頬は緩んで、いつものピザまんもバレー部のメンバーと食べ慣れた味なのめちゃくちゃ美味く感じるし、今回の件で距離が近付いたんなら結果的にはプラスだ。