第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
それからまた花巻君の家にお邪魔して朝食を済ませ早速本題へと入る。手元にあった分も含めて思っていた以上に資料が多い。とにかくこれを一つずつ片付けていかない事にはゴールは見えない。
「結構溜め込んでますね、花巻さん」
「悪い。後輩の分もあったから…」
「これじゃあ三日の休みの日だけじゃ足りないね。終わらなくても最後まで付き合うから」
「や、でもそれはさすがに…」
「さっさと終わらせないと自分の仕事もできないよ?二ヶ月しか時間ないんだし」
「それは…、仰るとおりだけど」
「今は残業の予定もないし大丈夫だから」
「今回は甘えさせてもらおうかな。手伝って貰ってる間の飯は俺が全部奢らせていただきますので」
「それはどうも。じゃあお言葉に甘えて…」
部屋にはキーボードを叩く音だけが響く。そんなに難しい作業ではないけど集中してないと数字が合わなくなったりするから会話も必要なときだけ。
好きって事を意識したせいかな。隣でいるだけで心強いし、パソコンと睨めっこしてる横顔だって格好いいし、一緒にいるだけで胸はいっぱいだった。
「んー…っ、あぁ。疲れた。ちょっと休憩」
あれからどのくらい集中してやってたんだろう。とりあえず一段落つけるかなってところまで終わらせてみたけど…。
「お疲れ。ちょっと休憩する?」
「そうだね、ってもう3時。たしかに朝ご飯が遅かったけどお昼はとっくに過ぎてたね」
「腹減った?」
「合間にチョコレート食べてたからそうでもないかな」
「俺もめっちゃ食ってた。ごめんな?柳瀬のなのに」
「気にしないで。期間限定とはいえさすがに買いすぎたと思ってたから…」
「ということは間接的にでも柳瀬の肥満防止に協力したって事で」
「そうだね。ある意味感謝しなきゃだね」
もう一度コーヒーを入れ直し、束の間の休憩タイム。散々チョコレートを食べたくせに今度はミルクと砂糖多めの甘いミルクコーヒー。