第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
「そういえばさ、さっきチラっと見えたけど支社での仕事が残ってるの?」
「あー…、見た?こっちに来る前にトラブってた件が結構長引いてさ…」
「大変だったんだね。でも言ってくれたらご飯とか無理しなくてよかったんだよ?」
「それとこれとは別。それに急ぎの仕事って訳じゃないから…。空いてる時間に少しずつ片付けてんの」
「だよなぁ。でも昨日は柳瀬が隣で寝てたし変な気おこさないようにって仕事してたんだよ」
「変な気って……」
それはそれでよかったんだよ…、なんてとても言えないけど。でもそれって一応女の子として扱ってくれてるって事なんだよね。
「でも俺も疲れてたみたいでいつの間にか寝てたけどな」
「じゃあ私が帰ってる間はちゃんと休んでよ。仕事は私が来るまで始めちゃダメ」
「…そうします」
「じゃあ私はこれ飲んだら始発で一旦着替えに帰ってくるね。私のうち、一駅先のところなの
「案外近くに住んでたんだな」
「みたいだね。駅前のパン屋さんで朝食調達してくるから、朝ご飯も一緒に食べよ」
「じゃあ昼と夜は俺に奢らせて?そんくらいしか出来ないけど」
「全然。むしろ溜ってる仕事に俄然やる気がでてきた」
「そんだけ元気なら二日酔いもなさそうだな」
「そうみたい。昨日しっかり眠れたからか今はスッキリしてる。迎えに来てくれありがとう」
「どういたしまして。これからも何かあったら頼れよ?」
「うん…、頼りにしてる」
お酒を飲んだ翌日がこんなに清々しく過ごせるのはいつぶりなんだろう。部屋を出ると朝日が東の空を明るく染めている。この後、一緒にいれるんだって思うと気持ちは弾むように高鳴っていた。