第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
体を起こすと一瞬クラっとしたけど体は随分楽になっていた。眠ってしまう前の記憶を辿れば花巻君に迷惑をかけてしまった事を今更ながら後悔する。
とにかく謝らなきゃと思ってその姿を探すと、パソコンを開いたまま机に突っ伏して眠る後ろ姿が目に入った。
起こさないようにとベッドから降りて、眠る花巻君の隣に座る。見るつもりはなかったけどチラっと見えたパソコンの画面はうちでも使っているソフト画面。でも本社での仕事内容ではなく多分支所での花巻君の仕事。
後輩に任せてきたっていうけど本当はこうやって一人で抱えていたのかもしれない。こっちに来る前にトラブルがあったとも言っていたし…。
「花巻君、無理しすぎだよ」
言葉にすれば寝顔も大きな背中も、記憶の中で優しく笑う笑顔も全部が堪らなく愛おしく感じた。及川さんから守ってくれたことも心配してくれたことも思い出せば切なくて、込み上げてくる想いはひとつ。
ああ…、私、花巻君の事が好きなんだ。