第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
それから10分程して花巻君はちゃんと来てくれた。走ってきてくれたのか息もあがっている。
「大丈夫か?」
「花巻君…」
「ったく何やってんの」
「ごめん、急に呼び出して」
「それより、はい、お水…」
受け取った水のボトルには近くのコンビニのテープが貼られていてわざわざ冷えてるのを買ってきてくれたんだ。
「ありがとう。…あー、冷たくて気持ちいい」
「んで、何があった?の」
「ご飯食べに行ってたんだけどね、ジュースかと思ってたらアルコールだったみたいで飲んじゃって…。それでこうなっちゃった」
「飲んだもんは仕方ないからとりあえず家に送ってく」
「ありがと…、でも立ちくらみしちゃうからもう少しここで休んでく」
「なら俺の家で少し休んで帰るか?電車で一駅だしタクシーなら10分で着くから」
「…でも」
「途中で倒れられても困るからな」
「ごめん、迷惑かけるね」
「そんな風に思ってないから」
自分が情けないのについ甘えてしまいそうになる。包み込んでくれるような優しさに涙が零れそうだった。
「うん…、ありがとう」
「そんな泣きそうな顔するなって。今タクシー呼ぶからか」
花巻君に抱えられてタクシーに乗り込む。ふわふわしたシートに肩に触れる花巻君の体温が心地よくて安心して、何か会話をしていたんだけどその途中で夢の中へと意識を放してしまった。