第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
今日は久々の三連休を前にひとりお買い物タイム。といっても好きなチョコレート店で期間限定のチョコを全種類お買い上げしただけなんだけど…。
予定のない三連休はこのチョコレート達と過ごすって前から決めてたの。休養と自分へのご褒美は大切だからね。
買い物を終えた後は駅前のカフェでラテをテイクアウトし、店内の新商品をチェックする。季節が変われば新しいフレーバーが入るし、最近は人気商品になるとすぐに完売してしまうから週に一回は必ず立ち寄ってる。
店内を見て回った後、入り口近くのカフェスペースには会いたくはなかった男性、………及川さんの姿。やば…っと思った瞬間、棚に隠れたけどこの店を出るには入り口の前を通らないと出られない。及川さんの居るところに私が偶然居合わせてしまったパターンだしどうせバレるのに無視なんてしたら感じ悪いよね…。
「お疲れ様です」
「あれ?柳瀬ちゃん…、今帰り?」
「そうです」
「遅いんだね。残業してたの?」
「いえ。…買い物がてら寄ってただけなので。及川さん、仕事ですか?」
「そう、明日は休み返上で打ち合わせだから資料チェックしておこうと思って」
「大変ですね」
「でもこれがやりたくてこっちに来たようなもんだから。上の人からはブーイングも多いけどようやくかたちになってきたから面白いよ」
「色んな意見はあると思うんですけど、若い社員はみんな期待してますよ。私も応援してます」
「そっか、ありがとう。…あ、ねぇ、よかったら今からご飯でもどう?」
「…え?今からですか」
「そんな怪しまないでよ。変なことはしないから。噂で聞いたかもしれないんだけど、俺、これから新しい企画のチームに入るんだよね。だから色んな人の意見が聞きたくて。時間があればお願いしたいんだけど…」
及川さん達の企画は確かに私も気になっていた。長年この仕事をやってるけどチームを組んで新しい事を始めるってあまりなかった試みだから。