第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
「大丈夫か?」
「…うん」
「コーヒー煎れ直すから」
「…ありがと」
まだ就業前なのに変な疲れを感じる。完全に及川さんのペースで、明日の歓迎会も言いくるめられてしまうんじゃないかって不安が過ぎる。
「花巻君と私の担当の仕事なんてないのにね」
「ああ言うしかなかった」
「分かってる。花巻君、ありがとう…」
「噂以上の奴だな。あんなんで何でもモテるのか俺には分からない」
「顔じゃないの?私は全然好みじゃないけど」
「明日、歓迎会にも及川さん来るんだな」
「花巻君もでしょ?部署が違っても同じところでするはず」
「行くの?」
「だって行かない訳にいかないじゃない」
「なら何かあったら俺に言えよ?今日のことがあったから迂闊に近づけないけど注意してみてるから」
「ごめんね。迷惑かけて」
「いや?大事な同期だし変な男に絡まれてるの放っておけないだろ?」
「変な男って…、さすがにそれは及川さんに失礼じゃない?一応先輩なんだし」
「じゃあ要注意人物って事で…」
「いいね。私も注意しとく」
「じゃ俺は部署に戻るわ」
「うん、じゃあ仕事頑張って」
偶然とは言え花巻君に助けられちゃった。私の事を気にかけてくれている事、女として見てくれている事が嬉しかった。