第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
会っていなかった時間を埋めるように話は尽きなかった。辞めていった同期のこと、支社での話…共通の話題からプライベートまで花巻君相手だと何でも話せる雰囲気だった。
「ここのね、シューパフェが美味しいんだって。私イチゴにしようと思うけど花巻君は?」
「じゃ俺、チョコバナナで。甘いのに酒ってのも合わないから〆はブラックだな」
「私もキャラメルミルクティにしよう。飲みに来てるのに花巻君全然飲んでないじゃん。私に遠慮しなくていいんだよ?」
「俺も飲む必要のない時は俺も飲まないようにしてんの。酒は嫌いじゃないけど好きでもないから」
「へぇ、知らなかった」
「こうやって美味いもん甘いもん食べてる方がずっといい。柳瀬相手だと尚更な?」
花巻君の言葉が嬉しくて、アルコールの入ってないのにずっと顔が熱くて頭だってぽーっとしてしまう。
「同期だもんね…。他の同僚とはまた違って絆みたいなものがあるのかな」
「かもな…」
「でも朝の挨拶、花巻君格好良かったよ。新人の時からしっかりしてたけどスーツ着て大勢の前に立って堂々としてるのってほんと格好良かった」
「格好いい…?」
「え?」
「そんな風に言われたの、久しぶりだから」
「あ、ごめん…、私ついぽろっと」
「いいよ。柳瀬から言われるとなんか嬉しいし」
「そうなの?」
「仕事ばっかしてたせいで彼女なんてずっといないし。なんせ支社は男ばっかだし…」
「そっか…、そうなんだ……、彼女はいないんだ……」
残り少ないノンアルのカクテルを飲むふりをして、心のどこかで“よかった”なんて思う自分もいる。及川さんの言葉には全然靡かなかったくせに…。
「そういえばさ、名古屋から出向できた及川さんって知ってる?」
「…ああ、知ってる」
「先月私が名古屋に行ってたときから妙に懐かれてて…。今日帰りが遅くなったのは及川さんに絡まれてたんだよね」