第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
翌日、朝一番迎えてくれたのは仲良くしてる同じ部署の後輩だった。
「先輩、お疲れ様でした」
「ありがとう。はい、これはお土産。駅しか寄れなかったから大した物じゃないけど」
「わぁ嬉しい!ありがとうございます。手羽先せんべい美味しそう。後でお茶しましょう」
「そうね。…でも折角名古屋まで行ったのにただ仕事だけして帰って来ちゃった。もっと名古屋名物食べたかったのに」
「遠出なら一泊したいですよね。そっちの方がゆっくり出来るのに」
「まぁ今回は一泊じゃなくてよかったけど…」
「え?」
「ううん、なんでもない…」
「あ、そう言えば今日こっちに花巻さん来てますよ。丁度居ないときに柳瀬さんを探しに来てました」
「そうなの?」
「また後で寄るって言ってました。先輩の同期なんですよね」
「そう。今じゃ数少ない同期の一人だけど一番話しやすかったな」
「私もこの前支社に行ったときにすごく親切にしてもらいました。だからよく覚えてるんですよね」
「そっか。じゃあ後輩の面倒を見てくれたお礼に花巻君にもおせんべいあげなきゃね」
「先輩たち、仲良しですね」
仲良しか…。そんな言葉もこの歳になるとなんだかくすぐったくて恥ずかしくなる。
淹れ立てのコーヒーとおせんべいの袋を取り出して自分のデスクへ戻る。机には新人の頃に撮った集合写真。笑顔で映る花巻君の笑顔が懐かしかった。
「久しぶり」
書類に集中していたせいで気配に気付かず、上からの声にはっとする。見上げるとそこには……。
「……花巻君」
「仕事してんのに悪いな」
少し大人っぽくなったけど、一緒に研修を受けていた頃と変わらない笑顔。