第29章 ❤︎ ALMONDROCA 花巻貴大
社員食堂で残念…とはいってもここのうどんだって十分美味しそう。帰りの新幹線で天むすでも買えばとりあえずここまで来た意味もあるよね…と自分を納得させながら熱々のおうどんをテーブルまで運ぶ。
「今頃お昼?」
振り返るとさっきの研修で確か同じグループだった人がにこやかに立っている。
「及川です。さっき一緒だったよね」
「そうでしたね…。お疲れ様です」
すごく整った顔をしている人でよく見ればスーツもブランド物。なんで私に声かけてきたんだろうって少し不思議な気もする。
「熱心に研修受けてたから気になって…」
「丁度今受けてる仕事に関係してたんでそれでつい聞き入ってしまいました」
「でももう14時だよ?お昼食べ損ねたの?」
「そうなんです。研修後も忘れないようと思って沢山メモしてたらこんな時間に…」
“へぇ”っと笑いながら隣の椅子に腰かけて目線を合わせてくる。初対面の人、しかもイケメンにこんな近距離で話かけられるなんてないから体が強ばる。
「そうなんだ。せっかくこっちに来たのに残念だったね…。東京本社の柳瀬ちゃん?」
「あれ?私名前言ってましたっけ?」
「ううん。気になったから人事のおねーさんたちに調べてもらった。内緒だけど」
「え?」
さらっと言っちゃってるけど個人情報だよね?こんな事していいのかな?
「俺ね、来月からさそっちに出向になったからちゃんと挨拶しとかないと思って」
「そうなんですか?」
「知り合いがいないと何かと不安でしょ?だからお近づきになっときたくて…」
「はぁ…」
「今日はさ、こっちに泊まるって出来ないの?遠出の出張だし、せっかくこっちに来て美味しい物も食べられないないて。…良かったら夜一緒にご飯食べようよ。なんならホテルも予約取っておくし」