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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第1章 ❤︎ 指先に触れたもの 及川徹


少し疲れた笑顔で机に広げたプリントの用紙をまとめながら、肩まで伸ばした髪を耳にかける。昔少しだけピアノを習っていたって聞いたけど、整えられた爪と白くて細い指は俺には艶っぽく映る。

でも今はそんな辛そうな表情のまま一人にはさせたくない。

「先輩の指ってさ、綺麗だよね」
「え?どうしたの急に」
「白くて長くて、ちょっと華奢でさ…」
「そう?そんなこと言われたことないんだけど」
「じゃあ俺が初めてなんだ、先輩の指褒めたのって」
「それを言うなら及川君もでしょ?」
「俺?」
「うん。トスを上げるとき、及川君の手や指をいつも見てたの。だから及川君がね、陰でも努力してるのも全部知ってるよ」
「ほんとに?」
「うん。皆のことも見てるけど、及川君はセッターだし、ほら、彼と重ねて見える時がふとあるの…」
「そうなんだ。でもそれなら俺と話すのも嫌じゃない?」
「全然そんな事ないよ。二年生で一番モテる及川君とご一緒できてむしろ光栄だよ?」
「そっか…。ならよかった」

でも今はそんな風に無理に笑わないで欲しい。俺も切なくなる。だから今はキャプテンと重ねてくれていい。それがまだ恋愛感情じゃなくてもいい。

「先輩…?」
「ん?」
「寂しくないの?」
「なんで?」
「キャプテンのこと話してから笑ってるようで笑ってないから。俺にはさ、隠さなくてもいいじゃん」
「……まぁ、バレるよね。彼の顔見るだけで泣きそうになってるんだもん」
「ほんとは寂しいんでしょ?」
「寂しいよ。だから今はこうやって一生懸命になれる時間を無理にでも作ってるの。そうしたら考えなくていいでしょ?」
「じゃあさ、まだ消灯まで30分ある。俺に時間くれない?」
「え?」
「抱き締めたいんだけど、いい?」
「抱き締めるって、こんなところで…、誰か来たら」
「とっくに鍵は閉めてる」
「嘘でしょ…」
「ごめんね。先に言うけど、俺、いちか先輩が好き。だからそんな泣きそうな先輩放っておけない」
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