第27章 ❤︎ キタサンブラック 北信介
「先輩も飲み過ぎです。ええ加減帰ってください」
「信介ほんますまん!それと彼女さんも……、すんません!」
「美沙さんには黙っておきますから」
「おおきに!ほな俺先帰るわ!ほんまごめんやで」
私たちに手を合わせて軽く頭を下げると一目散に逃げていった。信介からは深いため息が聞こえてくる。
「男同士の飲み会やし、ここら辺は治安もよくないから今日は迎えに来んでもええって言うたやろ?」
「ごめん信介…」
「会計が俺やったから出るのが店遅くなってん…。あのままキスされてたら先輩でも殴ってたで俺」
そりゃ私が逆の立場だっても同じだ。キスなんてされてたら嫉妬しちゃうに決まってる。
「いちかも仕事終わりやろ?送ってくから」
「うん…。あのね、私ただ会いたくて」
「それやったら家で待っててくれたら会いに行ったのに。わざわざ来んでええ…」
「あ…、……ごめん」
「帰ろか?……俺もなんか今日は疲れたわ」
「そうだね。うん、帰ろう」
本当はこの後一緒にいられたらなって思ってたけどこの様子じゃ家に送ってもらって終わりだろう。いつもなら私の歩幅に合わせてくれるのに早歩きだし会話だって続かない。
黙ったまま信介の歩幅に合わせているといつの間にか家の近くの公園まで来ていた。
「信介、怒ってる…よね…」
「別に怒ってないで?」
「だって全然喋ってくれないし…」
信介の声は全然穏やかではなかった。絶対に、そして確実に怒っている。
「ごめんなさい…」
そう言ったところで許してくれるんだろうか。約束を破った上に心配かけてしまった自分が不甲斐なくなる。