第27章 ❤︎ キタサンブラック 北信介
月が綺麗な夜だった。昼間の暑さを冷やすように涼しい風が吹き抜けていく。連休はもう終わってしまったけど繁華街は相変わらず賑わっていて夜の雰囲気に包まれている。
信介は青年会の飲み会に出席していて仕事も早く終わった私は勝手に飲み会が終わるのを待っていた。迎えはいらないとは言われていたけどもう飲み会も終わる頃だし飲んでる居酒屋も知っていたし何より信介に会いたかった。
22時過ぎると店内からぞくぞくとほろ酔い気分のお客さんが出てくる。この集団の中にいるんだろうかと信介の姿を探すけどいない。おかしいなと思ってスマホをとろうとショルダーバックに手をかけた時だった。
「みーさちゃん!!」
背後から聞き覚えのない声が聞こえたと思ったらいきなり後ろから抱きつかれていた。知らない男性の体とお酒の嫌な匂いに嫌悪感が湧く。
「え、やだ、ちょっと…、何!?」
「俺のこと待っててくれたん?俺も会いたかったぁ」
「待って、人違いですから…っ、やめてくださいっ」
完全に酔っ払ったその男性には私の声なんて届いてなかった。抱きつかれてキスをせがむように酒臭い唇が頬に触れそうになる、どうにかして離れようと身をよじるけど男の人の力には到底抗えない。
「やだってば…」
「美沙ちゃんなんでぇ〜?」
頬を擦られキスをせがまれる。“誰か助けて…っ”そう思った時に視界に入ったのは信介の姿だった。
「先輩、その腕離してもらえますか?」
「あれ?信介…?何?」
「今抱いてんの俺の彼女ですけど」
「え、マジで…っ」
「…え、ちょ、お前誰やねん!?」
慌てて腕を解放し私を見ると驚いた表情でその男はそう言い放った。
誰ってこっちが聞きたい。人違いだって言ってるのに勝手に勘違いしてキスまでしようとして一体なんなのこの人!?