第26章 ❤︎ 抱き締めた君との未来はなくても 菅原孝支
「孝支…」
いちかの体は汗ばみ始めていた。体に触れるだけでは物足りないのか甘えた声で俺の名前を呼ぶ。甘い声が条件反射のようについ雰囲気に流されて唇に触れてしまった。
「ごめん、キス、嫌じゃなかった」
「全然、そんなことないよ。もっとしてくれていい。いつも沢山キスしてくれたもん」
「そんなこと言われたらもっとしたくなるだろ?」
記憶の中のいちかの甘い声はいつも俺を誘うように響いていた。穏やかだった欲情が急に暴れ出すように唇を貪るように荒く口付けた。
「ん…っ、ふぁ」
荒いキスを繰り返し、下半身に手を伸ばせば待っていたかのように熱い粘膜が絡みついた。もっと、と強請るように体を捩じらせ体を寄せるいちかの中心に指を立てた。
「っ…んン」
壁の薄い部屋で我慢しているのに出してしまうような声は扇情的だった。いちかが俺を求めて、俺もいちかが欲しくて理性なんてものは簡単に崩れていく。全部忘れて俺を求めて欲しかった。
「やだ…そこ、じゃないっ」
「知ってるよ。どこがいいの?ちゃんと言って?」
「もっと奥が、いい」
「ここ?」
奥に届くとぴくんと仰反る。俺に見せる反応はなんら変わってなかった。どこが感じるかを知っているからこそあえて焦しながら愛液でもベトベトになった指を反応に合わせて動かし快楽へ導いた。荒く熱い息が肩に触れる。
「いちかは自分で変わったって思う?」
「え?」
「俺にはそうは映らない。好きだった時のまま。このまま抱けるって思うとごめん。正直嬉しい」
切なさ以上にずっと押し殺していた感情が溢れ出す。