第5章 ❤︎ 三日間ハメまくった記録 黒尾鉄朗
友人であるいちかとは半年ぶりの再会だった。どの辺りで住んでいるかくらいは把握していたけど実際に家には行ったことはなくあまり馴染みのない住宅街を進んでいく。他愛もない話をしながら5分程歩き洒落たアパートの前に辿り着いた。
「今はここの二階に住んでるの、彼氏と」
「へぇ、いいじゃん」
「もう始まってるから」
階段を上がってすぐの部屋の扉を開けると“黒尾じゃーーーん!久しぶりー!”とすでに出来上がった友人二人に出迎えられた。酒の入ったノリは大学時代と変わらなくて、一気に俺もテンションが上がる。
「さ、入って?」
「おじゃましまーす。…盛り上がってんねぇ、あいつら」
「鉄朗がくる二時間くらい前から飲んでるから」
「そーなんだ。通りで…」
「鉄朗も今日は仕事終わりなんでしょ?はい、とりあえずビール」
「さんきゅ」
キンキンに冷えたビールを渡されて、プルタブを開けると勢いよく炭酸が抜ける。涼しくなったきた季節とは言え、泡を唇で掬い冷たいビールとキツい炭酸が喉を突き抜けていく感覚は堪らない。
「んまっ」
「ほんと最高だよねー。次の日が休みだと尚更美味しく感じるよね」
「誘ってくれてありがとな。俺も連休は特に予定なくてどうしよっかなって思ってたから」
「そうなんだ。じゃあ今日はゆっくりしていきなよ。半年ぶりとは言っても積もる話もあるだろうし」
「そうさせてもらうわ。……でもお前こんないい家で住んでんだな」
「でしょー?…実はね、ここ、事故物件だったから安いの。前の住人首吊ってるって」
本人はさらっと気にしてない素振りだけど俺はいちかの想定外の発言にビールを吹きそうになる。