第25章 ❤︎ 黒尾先生との逢瀬
どれも映えする見た目の品々にいちかの歓声が上がる。
「全部食べていいの?」
「好きなだけ食えばいいから」
「嬉しい!一回甘いスイーツでお腹を満たしてみたかったんだよね」
「んじゃ夢が叶ってよかったな?」
「うん。先生ありがとー」
「どういたしまして」
無邪気に笑う素顔はさっきまで妖艶に甘い吐息を漏らしていたとは思えない。今はどこにでもいる等身大の高校生の女の子の姿でこのギャップも俺の好きなところのひとつだった。
「あー美味しかった!」
「まだ苺が残ってんぞ?」
「先生食べさせて」
「はいはい。甘えたれだなお前は」
「先生のせいだもん。腰が立たなくて家に帰れなかったら先生の家で今夜泊まるからね」
「何言ってんだよそれじゃずっと家に帰れねぇぞ」
「それでもいい」
「ばーか」
フォークで刺した苺をいちかの口へ運ぶ。一口にはちょっと大きくて頬張る口元がら果汁が垂れる。
「ちゃんと咀嚼しろよ?」
「……うん」
雫を拭う仕草が色っぽくて吸い寄せられるように唇から垂れる苺の雫を舌で掬い取るように舐めとった。また欲が沸々と湧き上がる感覚に苦笑するしかない。
「なぁいちか…」
「何?」
「せっかく天気もいいんだから外の景色も見ようぜ」
「じゃあ抱っこ」
「仕方ねぇお嬢さんだな」
甘えるように両手を広げたいちかを抱き抱えて全面がガラス張りになった窓の前で下ろす。15階からの眺めは自分の住む街が一望できる。