第25章 ❤︎ 黒尾先生との逢瀬
いちかの追試は見事に満点だった。メールではデートの約束もしたけど肝心な日程が決まらないし俺も変わらず多忙で二人の時間なんて暫くはお預けだ。
けど神様の気まぐれかなんか知らないけど体育館の照明の工事が急遽入るとかで明日の練習が取りやめになってしまった。ずっと休日返上で練習をしてきた部員たちにとっても俺にとってもそれは吉報だった。
家に帰るまで待ちきれなくて帰路に着く車の中でいちかへコールする。
“先生?どうしたの急に…”
“明日休みになった”
“ほんと?”
“どっか連れてってやろうか?”
“いいの?”
“どこ連れてってやろうかって今色々と調べてたんだけど駅前のシティホテル知ってるよな?”
“うん、最近できたとこだよね?”
“明日でも部屋空いてて予約できるみたいだし一日ホテルで過ごすってプランはどう?”
“え、最高じゃん。…大人のデートみたい”
“どうしたって外出歩くわけにもいかないしお前に合わせられないけど二人きりの時間が欲しかったんだろ?”
“うん、そうなの”
“だったら明日朝から行ってゆっくりしようぜ”
“でもそんなに早くから空いてるの?”
“そういうプランもあるって書いてる”
“1日過ごすってことはルームサービスとか頼んじゃっていい?”
“外で堂々と食えないもんな。その辺はお好きにどうぞ”
“やった。こんなサプライズみたいなデート嬉しすぎるよ。あー、明日が待ち遠しい”
“じゃあ明日9時に迎えに行くから…”
“うん!今から準備してるから”
電話越しからでも伝わってうる嬉しそうな声にいちかに早く触れたいなんて欲が募る。高校生のガキじゃあるまいしもっと余裕ぶってたいのに気持ちを乱すには十分な明日への期待に胸が高鳴った。