第22章 ❤︎ セックスレスに奮闘する鉄朗パパ
嬉しそうにビールの缶に口付ける。薄く色付いた唇、こくんと喉を鳴らす仕草、じっと見つめる俺に気付くと“見ないで”と恥ずかしがる表情。その全てが可愛く見えてそれでいて色っぽい。今やってる売れっ子のお笑い芸人の漫才なんかよりもいちかを見てるだけで飽きないし、ビールもいつもよりも断然に美味い。
飲み干したビールの缶を机に置くとまた俺に体を預ける。さっきよりも深く甘えるように、会話なんてなくてもこうやって触れてるだけで満たされていく。
「ねぇ、鉄朗君」
「何?って君付けとか久しぶりだけど」
「……キス、して?」
突然の申し出だった。というより最近はキスするのにいちいち確認なんてしないからいちかの言葉に戸惑うくらいの衝撃だった。大切にしようと心に決めて初めてキスをしたあの夜の光景が蘇ってく。あの時よりもずっと好きで大切で愛おしさで溢れてる。
「そんな可愛いお誘い、喜んで」
ソファへと押し倒していちかを見つめた。キスの前に深く息をする。幸せが胸いっぱいに広がっていって苦しくて静かに目を閉じたいちかへと口付けた。
「……ん」
すぐに深い口付けに持っていくのも勿体無いって思うほど角度を変えてただ重ねて触れてるだけで気持ちいい。
「てつろ?」
「んー、何?」
「キス、優しいね」
「物足りない?」
「いつも舌入れてくるのに」
「なんか今はこうやってるだけでもすげぇ幸せ感じちゃってて
「じゃあ私からしてあげる」
いちかの唇が開いて舌が迎えてほんのりと苦味のある味。まだ酔うには足りないアルコール量だけど、いちかからの甘い誘惑のキスには完全に酔いしれてしまう。テレビを消せばリップ音と唾液が混ざり合う水音で一気に雰囲気は高まっていく。