第20章 ❤︎ 年下男子の本気 及川徹
「まだ何も決まってないでしょ?」
「でもその予定でしょ?いちかの友達にだって次いつ会えるか分からないんだしちゃんと言っておかないと」
「そうかもしれないけど…、でも」
「というわけでこれからもよろしくお願いします」
ぺこっとお辞儀をしてから満面の笑みで“帰ろ?”と手を差し出す。いい歳して何やってんだか…と思いながら周りが冷やかす声の中、手を引かれて車まで歩いた。
「あー、恥ずかしい」
友達に後でなんて言われるか分かったもんじゃない。お酒が入ってなかったらこんな恥ずかしい事できなかった。
「ごめんね…。急にこんなことして」
とは言え別に謝るような事でもないし、嬉しくないわけでもなかった。
「迎えにも来てくれたし…、許す」
「ははっ、ありがとう」
久しぶりに助手席から見える景色はネオンサインや電灯で案外明るくて、ステレオから流れるジャズが夜の街を色付けていく。徹には似合わない内装も白とピンクの車。それでも絵になるんだから不思議…。
「何?どうしたの?」
「徹ってよく見たら格好良いんだね」
「えー?今更?」
「酔ってるからそう見えるのかな…」
「高校時代は青城のF4って呼ばれてたからね」
「ほんと?」
「嘘に決まってるじゃん」
「…だよね。一瞬真に受けちゃった」
「でも結構モテたよ。高校の時が一番モテたんじゃない?」
「今だって十分モテるでしょ?」
「でも俺に彼女がいるの知ってるから、告白もされないし合コンにも全く誘われない」
「まだ遊べばいいのに…」
「遊んでいいの?」
「そりゃ徹が遊びたいって言うなら無理には止めないけど…」
「止めてよ。そこはさ…」
「じゃあ徹はなんで私みたいな年上がよかったの?他にも徹にお似合いの人は沢山いるじゃん」
「ねぇ…、いちか、酔ってる?」
「酔ってるけど…」
「あのね、変な話だけどいちかに出会った時、運命感じちゃったんだよね。まだ結婚って早いのかなとは思うけど、これからもずっと好きなのは変わらないし、俺の直感を信じようと思って」