第19章 不器用な優しさ 瀬見英太
作業も終わり、食堂に着いた時には部員も疎らだった。すでに英太の姿はなくて1年生と2年生が一部でにぎやかに夕食をとっている。ほんとは大好きカレーライス。だけど疲れもあってかあまり進まなくて、頑張って口に運んだけど殆ど残してしまった。
そのままだったら良かったのに、一人部屋に戻るとプレッシャーから解放されたのかと後になって空腹感に襲われてしまった。
寝てしまおうかとも思ったけどまだ20時…、コンビニも近いし何か買ってこよう。お腹がいっぱいになったら少しは気持ちも落ち着くかなぁ。
夜に出歩いちゃダメとも言われてないし、パーカーを羽織るとそのまま宿舎を出る。昼間とは違って静まる校庭を横目にコンビニに近い門へ向かった。
「どこ行くんだ?」
「…ひぇッ」
誰もいないと思っていたのに急に声がかかり思わず変な声を出してしまう。
「俺だから」
「…あ、……英太」
「もう夜も遅いけど?」
「ちょっとコンビニに…」
「腹減ったのか?」
「え?」
「あんま食ってないんだろ?夕食…」
「知ってたの?」
「手伝いに来てくれてる子から聞いた」
「そうなんだ。…疲れてて食欲が湧かなくて」
「慣れない事して気分でも悪くなったのかと思ったから、監督に許可貰って様子見に来た」
「ありがとう。…メールでもよかったのに」
昼間のことがあったせいか、お互いなんとなく気まずくて沈黙が包む。
「じゃあ私ちょっと行ってくるね」
「俺も行くから」
「でも…、コンビニはすぐ近くだよ」
「いい。…一人で行かせるのは危ねぇし」
そう言うと私に背を向けて先に歩き始める。
「…………ありがとう」
素っ気ない態度にまた胸が痛んで、消えそうな声でそう返した。