第18章 ❤︎ 好きがまたひとつ増えていく 日向翔陽
翔陽の胸に飛び込むとしっかりと両腕で抱きとめてくれる。オレンジの髪の色もこの匂いも全部覚えてる。やっと翔陽に会えたんだって感情がうわっと溢れてくる。
「翔陽だ…」
「ただいま」
「おかえり」
「なんか泣きそうな声になってるけど大丈夫?」
「そのくらい嬉しいもん」
「俺も…」
言葉はなくてもずっと同じ気持ちでいてくれたことが寂しさで空いたままの空白を埋める。どちらからともなく重ねた唇に切なさが溢れ出した。
「ねぇ…」
「何?」
「翔陽、今、何考えてるの?」
「……へ?」
「なにその声…。上擦っちゃってるよ?」
「だっていちかが急に、言うから」
「今夜はそういうつもりで来てくれたんだと思ったんだけど」
「そりゃ……」
「何?」
「……したいなって思ってるんだけど、……いいの?」
控えめにも程があるしついでに可愛いにも程がある。あれから一年経って背もまた少し伸びて体格もすっかり大人になってしまった翔陽。筋肉質な肌の感触、シャープなフェイスライン、真っ直ぐに見つめる目は情欲に揺れてるのに相変わらず誘い方は下手くそなまま。
「私たちの関係って何だった?」
「恋人…」
「だったらいいの?なんていちいち聞かなくていいんだよ」
「だって俺、いちかが初めてだったし、したのなんてあの一回きりで…。二回目のチャンスがあっても一年ぶりじゃほぼ初めてと同じというか」
「初めての時みたいに自信ない?」
「それに近いかも…。情けないけど」
「向こうで可愛い子の誘いにのらなかったの?そこら中に水着のオネーチャンたちがたくさんいて誘惑もあったんじゃないの?」
「そんなことしないって。絶対!それだけはないから」
「翔陽の態度見てたら分かるよ。ちゃんと信じてるから」
「うん。いちか以外にはそんな風に見れないし水着のおねーさんとか怖かったから遠目から見るだけで避けてた」
「じゃあ一年も我慢してたの?」
「我慢した…。一人ではしてたけど」
「私としたかった?」
「めちゃくちゃしたかった。でもさ、いちかもしたいって思わなきゃ無理させることになるから。その確認はしなきゃだろ?」
「翔陽のそういう優しいとこ変わらないね」
「え、ダメ?」
「ダメというかむしろ大好き。でも今夜はちゃんと誘ってくれるかな?」
「うん……。じゃあ、しよっか?」
「うん。嬉しい」
