第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「いいんだけど…、ちょっとドキドキしてきちゃった」
「そう?ならもう部屋行こうか?」
「でもまだ髪の毛乾いてない」
「あとでいちかちゃんが乾かして?」
「え?」
「今は早く二人きりになりたいから」
そういうと座ったまま軽々と私の体を抱えるように持ち上げる。バスタオル一枚で包んだ体は光太郎さんの体に密着して肌が直接触れる。
「え?え?…」
「さっきいっぱいぎゅーして?とか可愛いこと言ってただろ?」
「言ったけど…。何もお姫様だっこなんてしなくていいよ」
「いいじゃん、俺がしたかったんだから。部屋もすぐそこなんだしいいじゃん」
「このままで部屋行くの?」
「だって誰もいないし
「本当に大丈夫?」
「大丈夫。俺以外にいちかちゃんの素肌見せないから」
浴室のドアをゆっくり開けて、そのまま光太郎さんの部屋へと向かう。光太郎さんの言った通り誰もいなくて少しほっとした。
私を抱いたまま足早に部屋へ戻る。乾ききっていない髪の毛のしずくが頬に触れ、見上げると髪を下した光太郎さんの横顔はいつもよりもずっと大人びて、また私の心を乱していった。