第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「光太郎さん、お酒飲んでもいい?」
「今日はダメ」
「なんで?」
「酒に逃げるな」
「そうだぞー。そういうところお前の悪い癖。まだガキのくせに酒の味覚えた途端、嫌な事があると酒に逃げるようになってよ…」
確かに少し前の私はそうだった。鉄朗の言う通りで何も言い返すことはできないし、実際全部を忘れたくて嫌な事があると無理にでも飲んでいた時期だってあった…。
「酒飲んだって根本的な問題は解決しねぇのにな…。大学の人間関係が嫌だとか単位とれないかもとかしょーもないことで悩んでよ…」
「それはそうだけど…。あの時は鉄朗とのことでも悩んでたから」
「言い訳だろ?だったらその都度俺と話し合えば良かったのにお前はいつもなんでもないっつって逃げてたじゃん」
「だからそれは鉄朗の負担になりたくなくて…。仕事もずっと忙しそうだったから」
「お前が呼べばいつでも行ってやってただろ?眠れないって時も朝まで何回も付き合ってやったし」
「それは関係ないでしょ…っ」
「光太郎君は知らねぇかもしれないけど一人抱え込んで暴走するタイプだったから。メンヘラっていうの?まさにそんな感じ……だから俺以外の奴だともっとダメになるの、コイツは」
「けどさー、それは鉄朗君がちゃんとケア出来てなかったからじゃなくて?」
「……何だと?」
「いちかちゃんだって、ちゃんと話聞いてあげて少し背中を押してあげれば出来る子だよ。鉄朗君みたいになんでも否定しちゃ可哀想だ」
「否定じゃねえよ、正論だ」
「でもいちかちゃんはその正論を求めてないんじゃない?人間関係の悩みに正解なんてないし、恋愛にだっていろんな形があるんじゃね?」
「お前が言ってんのは所詮理想論だろ?それが甘いつってんの」
「理想論でもいいじゃん。それで救われるならそれでいいじゃん。そういう生き方考え方だってあるだろ?」
「こんなとこで育つの脳天気で良いよな。社会に揉まれることもねぇし、なーんも考えなくていいもんな」
「そう、だから俺はここが合ってるし、ここに居たいって言ってくれる人にはそうすればいいって思ってる。だからいちかちゃんが望むなら俺はここに居て欲しい」