第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
それから帰りは少しだけ遠回りして港を二人で散歩していた。真っ赤な夕焼けと青い海のコントラストが綺麗で最終便の船が港に到着するのを眺めていた。
繋がれた手と肩の触れる距離はまだ慣れないし心臓はいつまでも落ち着かなかったけど、今は幸福に満ちている。
「何考えてんの?」
「………光太郎さんのこと」
「え、そうなの!?なんで!?」
「なんでって……。だってこうやって手を繋いで歩いてるなんて夢みたいで。体なんかずっとふわふわしるし」
「大丈夫?抱っこする?」
「だめ。そんなの恥ずかしくて死んじゃうから」
「えー?」
「別に歩けないわけじゃないもん」
ただドキドキしちゃってるだけで……。
そりゃ私だってして欲しいけどだってさっきのキスだってまだ消化しきれてないのにこれ以上触れちゃうと心臓壊れちゃうよ。
「そういえば俺さ、さっきおかんとあかーしにメールしたんだよな。報告も兼ねて」
「なんて?」
「いちかちゃんが彼女になったからって」
「嘘!?」
「おかんにも同じ反応されたけど、俺も実感まだなくて夢じゃないかって思っててさ…。だから誰かに伝えたら実感湧くかなぁって」
「それで…二人はなんて?」
「帰る前にちゃんと言えて良かった」
「でもまだしばらくはこっちにいるの延長するんだろ?」
「うん。部屋が空いてるなら夏休みが終わるまではいたい」
「その辺は大丈夫だから。てかさ、もう俺の部屋でもよくない?」
「それは……、まだ、恥ずかしいから無理」
「じゃあ俺がいちかちゃんの部屋に行くから。今夜からでもいいけど…?」
「無理。やだ。それにおばさんもいるじゃない」
「いいじゃん。………もう恋人同士なんだから」