第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
片手で抱き寄せられて耳元に光太郎さんの息が触れる。“恋人”って言葉に息が苦しくなるくらいに締め付けられて、じわじわと甘い感情が広がっていく。脳内が淡いピンク色に染まっていって唇がかすかに動く。
ここでもし“いいよ”なんて言っちゃったら、このままもう心も体も全部光太郎さんに捧げちゃいそうだよ
「……なぁ、それ、マジで言ってんの?」
だけどそんな二人の甘い雰囲気を遮るように、忘れたくても忘れる事の出来ないあの“声”が金縛りに遭ったかのように私の動きを止める。
「そこのお前さ、……俺の女に何してんの?」
鉄朗の冷たく見下ろすような目が一気に現実に突き落とす。
「鉄朗…?」
「え…?」
「久しぶりだな、いちか」
もう会うことはないってそう思ってたのに……。
どうしてここに……?
next.