第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「ひゃー。つめてー」
「あ、ずるい。私も行く…」
慌ててTシャツと短パンを脱いで光太郎さんの後を追う。
「久々に来るとやっぱいいよな…って、え?ぁ?」
「え?何?」
「ちょ、その…水着…」
「…変?」
「変とかじゃ全然ねぇけど。…俺にはちょっと……、刺激が強いかも」
「……ごめんねっ、そんなつもりじゃなかったんだけど」
あ、やば…。もしかして引かれちゃった?
「悪いけどそこの俺のTシャツ着てて?濡れてもいいから」
「いいの?」
「すげー嬉しいけど…、俺が無理。いや、ほんとに嬉しいんだけどね……」
いや違う。これは…完全に照れてる、よね?
こんな風に素直に言葉にされたら私だって恥ずかしくなるし、変に意識してしまう。体が火照ってきて赤くなった顔を隠すように光太郎さんのTシャツを被った。
「冷た…っ」
心臓がきゅっと縮こまるようなくらいはじめの一歩は冷たかった。まるで水風呂に入っていくかのようなそんな感じ。かろうじて太陽の日差しが届くのが救いだけど、目の前の光太郎さんはもう腰まで浸かっている。
「待って…」
「ゆっくりでいいから」
少しずつ深くなっていく川底。冷たさにドキドキと心臓は鼓動を早めてゆっくり呼吸しながら光太郎さんの元へ歩みを進める。
「足元とられないようにな?」
「うん…」
流れはゆっくりだったけど腰まで浸かった時にはほぼずぶ濡れ状態でTシャツの生地がぴったりと肌にくっつく。川の流れる音と体に触れる水圧、やっとのことで水の冷たさに馴染んだ背中を日差しが優しく温めてくれる。
差し出された手を掴んで光太郎さんの傍に来た時、ふと今言わなきゃ…そんなことが頭をよぎった。透き通る水はどこまでも透明でエメラルドグリーン輝いてこの澄んだ水のような気持ちにもう嘘はつけない。
「光太郎さん…あのね?」
「待って…」
「え…」
「……これ以上はまずい」
「何が?」
ふと顔をあげると光太郎さんは怪訝そうな顔で私を見下ろしている。