第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
午後になって二人で食事を済ませると光太郎さんの運転する車で沢へと向かった。
Tシャツの下には勿論、水着。着けてみてこんなに谷間がくっきり見えてたっけ?って今更ながら恥ずかしくなったけど光太郎さんも沢へ行くのを楽しみにしてくれてたし今となっては仕方ないよね。
あれこれと考えながらちらっと運転席に視線を移すと思いっきり目線が合ってどきっとする。たかがこれだけのことでこんなにドキドキして……、私、本当に重症かもしれない。
「水着持ってきてる?」
「うん。このTシャツの下に着てる」
「9月入るとさ、沢の水が一気に冷たくなるからこれがラストチャンスかもな」
「ならよかった。水着一回も着れないまま終わらなくて」
「でも寒くなる前に言えよ?風邪引かせるわけにもいかねぇからな。…こっちに来るのがもう一週間くらい早かったから海にも入れたんだけどな」
「バイトさえなければそうしてた。でもクラゲに刺されるのは嫌だから」
「来年はもっと早く来いよ?」
「じゃあ今から予約しておくから部屋は押さえておいてね」
「オッケー!任せといて」
なんとか平然を装うことができたけど、同じ空間にいるだけでこんなに意識してしまうなんて、私の恋は自分ではコントロールできない領域へと入ってしまったんだろうか。光太郎さんはいつも変わらなくて私だけが振り回されてるみたい…。
適当に車を停めて沢へ降りていくと、透明度の高い綺麗な水辺に辿り着く。よくテレビなんかではこういったスポットが特集されているのを見たけど、実際目の当たりにすると感動すら覚える。
「本当に綺麗だね」
「だろう?ここは名水なんとかに選ばれるだなんだって言ってたくらいだからすげー綺麗なんだろうな」
「そんなところで泳いでいいの?」
「俺らは昔から泳いでるし。そもそも誰も来ないしいいんじゃねぇ?」
「そうなんだ…。でも怒られた時はその時でね…」
光太郎さんはTシャツを脱いで岩場に置くとバシャバシャを飛沫をあげながら緩やかな流れの中を歩いて行く。