第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
ああ、この女の子として扱われることに慣れちゃいけない。向こうに戻れば厳しい現実が待ってるんだから…ついニヤけてしまいそうな状態に理性は自分にそう言い聞かせてる。
だって光太郎さんは好きフィルターで何をしてても格好良く見えちゃうし、京治さんもすっごくイケメンだし、私ってば凄く贅沢な経験をしてるんじゃないかな…。こんなに優しくされっぱなしじゃきっと罰が当たるよね。光太郎さんに告白しようかって考えてるのに、その前にこんなに運使っちゃって大丈夫!?
……なんて、まだ酔ってもいないのにおかしなテンションだった。恋は盲目とはいえ私は浮かれっぱなしで恥ずかしくなってしまう。
「じゃ始めるからそこで見ててー」
「はーい」
ほら、手を振る光太郎さんだって素敵だもん。どうしたってこの胸の高鳴りは抑えられない。私の目なんて完全にハートになっちゃってる。こんなの赤葦さんには絶対気付かれてるよ…。
「いくぞー」
そう言った後、小さな火種がついたと思ったら何秒か後にシューっと音を立てて夜空に向かって真っ直ぐに火花が散る。それだけで思考は止まり、一瞬でその場の空気が変わるように次々に新しい花火に火がともって暗闇を鮮やかに彩っていく。
「やっぱいいな…、花火って」
「すごい…。綺麗…」
「夏、ですね」
子どもの頃、初めて花火を見た時は時間を忘れて見入ったものだ。終わって欲しくなくて終わってしまうのが切なくて楽しい思い出なのにどこか切なさが心に触れる。
だから今は、少しでも長くこの時間の中で居たいよ…。