第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
蝉の声も収まりつつある夕暮れ時。目の前の夕日が沈みきったら真っ暗な夜がくる。一日の終わりにみる夕日はいつも切なく感じていたけど、今は光太郎さん京治さんの3人に囲まれて嬉しい気持ちのほうが勝ってる。
夏の夜にしか出来ないお楽しみだもんね。
「ちゃんと虫除けした?」
「ばっちり。花火用のお水もバケツあるし準備完了」
「今日は風がないからいいですね。火の準備も出来てます」
「んじゃあ花火大会始めるか」
「大会ってあんた。…手持ち花火ですよ?」
「いいじゃねぇか、そっちの方がテンション上がるし。優勝者には俺からの熱い抱擁が待っています」
「いりません」
「いちかちゃんには一晩抱き枕としての機能付き…」
「私もいらないや」
「え!?なんで!??」
「こっちに来てからよく眠れるのでご心配なく。部屋のクーラーの効きが悪い時があるし光太郎さんが抱き枕じゃきっと暑くて眠れない」
「確かに、あの部屋のクーラーも相当古いからな。来年の夏までには取り替えるか」
「急に仕事の話に戻らないでください。いつまで経っても始まらないじゃないですか」
「悪い悪い。いちかちゃんが買ってきてくれたのはこの手持ち花火と噴き出し花火か…」
「もう夏も終わりだからセールになってて」
「んじゃ先に噴き出し花火やっちゃおうぜ」
「それならあの辺でしますか」
「そうだな。あ、いちかちゃんはそこにいろよ、危ねぇから」
「火傷したら大変ですからね」
「…うん、ありがとう」