第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
バスの着いた先は港近くの小さな町だった。とはいえ家もそれなりに多くて光太郎さんの言った通りスーパーもあった。観光客がお土産を買い求めていたり、地元の買い物客でそれなりに賑わっていた。
適当に店内を歩いて見て普段自分たちが買い求める商品との値段の差に驚いたり、お土産品のコーナーにはよく見かける東京土産があったり…(まぁ厳密に言えばここも東京ではあるんだけどね)見るところも少なくて30分程で買い物はあっけなく終わってしまった。
「こんなんだったら光太郎さんにも一緒についてきてもらえばよかった。そうしたらデート感覚で買い物できたのにな…」
もう面倒な女にはなりたくないのに、そんな我儘もつい零れてしまう。
でもね、こうやってもう一度恋する気持ちで胸がいっぱいになるのは嬉しかった。なんの躊躇いもなく好きって思えて離れている時間にすら恋してるだもん仕方ないよね。
店内に流れるサマーミュージックは私の背中を後押しするようにテンションを上げていく。人を好きになるだけで幸福なのだとその時初めて私は知った。
それから一時間ほどして光太郎さんの車が私の前に停まった。ウィンドウ越しに見えるいつもの笑顔に胸は高鳴る。
本当はもっと近づきたい。触れたい。ずっと見つめていたい。まだ言えないけど、光太郎さんの背中に溢れそうな熱い想いをそっとぶつけた。