第3章 ❤︎ 結婚記念日 赤葦京治
長い1日も終わって静かな夜が始まる。今日買った入浴剤とボディソープはピンクグレープの香りがして体をふんわりと包む。久々にゆっくりと過ごせる夜だから感情はすっかり高まっていた。
髪の毛を乾かし終えて寝室に戻ると京治がベッドに腰掛けている。いつもは疲れて先に寝ちゃうこともあるのに京治にとっても今日は特別なのかな、そんな期待を隠しつつも普段通りに隣に座る。
「ちゃんと温まった?」
「うん、気持ちよかった」
「もう少し起きててもいいけどどうしようか?寝る?」
「うん。そうだね。沢山歩いたし横になろうかな」
「じゃあいちか、こっち」
両手を広げた京治に吸い寄せられるように腕の中へ入り込むと、私と同じピンクグレープの香りがする。そのまま押し倒されちゃうのかなって思ったけど膝の上に乗せられて向き合うように座らされた。
「ちょっと恥ずかしい」
「もう一年も経つんだからさすがに慣れて」
「はい…」
「ねぇ、いちか」
「どうしたの?」
「そろそろ…、子ども欲しくない?」
「……え?」
思わず顔をあげる。だって私もいつかは、とそう思っていたから。
「今日さ、女の子とのやりとり見ててそう思った。というかなんかいいなって思って。結婚して一年だしそろそろどうかな?」
「うん。私も京治と同じ気持ちだよ」
いつも忙しくしてたし“赤ちゃんが欲しい”ってほんとは思ってたけど少し恥ずかしくてなかなか言い出せなかった。絶対、無理強いはしない優しい人だからこんな自然なタイミングで気持ちが重なったのが嬉しい。
「じゃあ、いいかな…?」
「うん…」
時間がゆっくり流れていく。見つめ合ったまま二人笑ってゆっくりと唇を重ねて心拍数が上がっていくのを感じた。