第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「こうやって組み立てるんだね…」
「組み立てなくていいタイプのあるけど俺はこっちの方が好き」
「全然分からないけど、似合うね、釣り竿が…」
「俺もそう思うわ。釣り具屋のCMでもこねぇかなぁ。釣り竿もリールもいいもんだと高くて買えねぇもん」
「でも最近だと100円ショップとかでも売ってるのみたよ。1000円とかだったけど」
「あれでも釣れない事はないんだけどなぁー…でも釣るなら大物狙いたいじゃん」
「今日も狙うの?大物」
「いや?今日はちょい投げ釣りっていうの。いちかちゃん初心者だし」
「私見てるだけでもよかったんだよ?」
「何言ってんの、やらなきゃ面白くねぇじゃん」
“ほいっ”と言って組み上がったばかりの釣り竿を渡してくれる。よく使い込んであるのか小さな傷が沢山入っている。
「あとエサだけど…、ゴカイ……あのミミズみたいなの触れる?」
「うん、平気」
「マジ?」
「小さい頃はさ、幼馴染みの男の子とよく遊んでたから案外慣れてるの」
「やるなぁ。じゃあコイツをブチっとちぎって針にこうやって通してくれる?」
「上手だね」
「針が刺さると抜きにくいから気をつけて」
「うん、分かった」
隣で私も見よう見まねでエサを付けていく。平気といった割には実際に見ると可愛くはない。
あ、この感触……、やっぱり気持ち悪い……。
「それで…、エサ付けたらこんな感じで投げてみて?」
竿を振るとシュッと真っ直ぐに針が飛んでいく。私も真似て投げてみたけど光太郎さんみたいに遠くまでは飛ばずなかった。透明な海底にゆっくりとエサが沈んでいくのが見える。