第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
朝食を済ませて慌ただしく準備に取り掛かる。日焼け止めと虫除けはいつもよりも念入りに、虫が出るといけないから上着に長袖のパーカー。
ふと見た鏡に映る自分の姿はこっちに来る前よりもずっと顔色もよかった。ちゃんと食べて眠る生活ってやっぱり大切なんだ。
身軽に感じる体も嬉しくて気持ちもつい先走ってしまう。急いで一階へ降りると釣り竿にクーラーボックスを抱えた光太郎さんが玄関で待っていてくれた。
「んじゃ行くか?」
「はい、お願いします!」
一歩外へ出れば真夏の眩しさ。太陽は昇り始め日差しもどんどんキツくなってキラキラと光る波打ち際は綺麗で、その透き通る水の透明度にも目を奪われる。
「色々釣れるスポットがあるんだけど日陰んところがいいよな?」
「やっぱり暑いかな?」
「暑いと思う。アスファルトからの照り返しもキツいから」
「じゃあ日陰のあるところがいいな」
「そうだな、了解」
こうして歩いているとあの人の背中を思い出す。幼馴染みだったら小さい頃はこうやって近くの公園まで遊びに行ったりしてた。思えば長い付き合いだったのにな……。
砂浜に作った山がいつか波にさらわれていってなくなってしまうみたいに、壊れてしまうときは何をどうしてもダメなんだな…。
「ここら辺でいいか」
着いた場所は港から続く防波堤だった。よく見れば何人かの釣り人も釣りをしているようでよく分からないけど、ここもそういうポイントなんだろう。
クーラーボックスを下に降ろすと、持ってきた釣り竿を手際よくセットしていく。もう一つ小さな箱には沢山の糸や針、ハサミなんかも入っていた。